2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

論理の筋道、堆積した経験と経験の隙間に現れるもの。対象を単一に取り上げ、その特徴をのみ言及することはできない。いかなる文脈から現れたのか、それが最も重要な話題である。個別的だ、一般性がないと言うか。それをなぞるように現れる物事を傍証として…

光/闇の不均等さ

迷いを闇とし、悟りを光とする。これは、闇が環境・状態であるのに対し、光は瞬間の現れであるという点で不均等なもの。しかし光を、闇を打ち破るもの、というだけでは理解ができない。2つの相に本当に分けられるものか?闇は光が当たらぬ場所であるなら、光…

対象/媒介としての光

光とはその現れにおいて、大別して2つの仕方を持つ。すなわち、対象としての現れと媒介としての現れである。前者は、相対的な暗さから見出される光の現れであり、後者は普く光のある世界において「ものが見える」ことにおける媒介としての光の現れである。前…

『盲者の記憶』引用

ところで、「見えざるもの」のこの「幻(ヴィジョン)」から出発して、そのすぐ後に、天使は書くことを命ずる。感謝するためには、すなわち恩寵を返済するためには、出来事の記憶を書き込まなくてはならない。(……)語りの記録文書、書き記された物語は感謝し恩…

家を建てる2

見よう見まねで集めたものは、うち捨てられた廃材からいくらでも手に入った。新聞紙に厚紙、厚手の毛布も手に入り、これで床は何とかなりそうだ。さて、さっそく家を建てよう。俺は、空地の片隅に厚紙を敷き、その上に新聞紙と毛布を重ねた。次は柱だ。しか…

家を建てる(not鈴木志保)1

俺は家を建てようとした。風雨の中でもそれなりにやっていけるし、食い物はゴミ箱を漁っていれば何とかなっていた俺がだ。俺はそれで満足していた。しかし、周りの奴らは家が欲しいとぼやいていた。ついに、知り合いの一人がこつこつと貯めたその金で家を建…

捧げもの

ヴヴン。汚物にまとわりつく悪魔の配下の訪れが聞こえる。私は耳を塞ぐ。何ものも私に干渉できぬよう、耳を無益にせしむべく塞ぐ。強く強く掌を押し付けていると、耳の奥から羽音が響く、ヴヴン。背筋に冷たいものが走り、我を失った。耳の奥の渦巻きになっ…

桃の入口

桃李園、紙屑に飛沫を跳ね散らして車は視界を塞いだ。新たな傷をこさえた借り物の乗り主は蒼ざめている。もう少し進めば黒雲が辺りに続くだろう。馥郁とした桃を携えた新妻は、光る携帯を手に取って見た。危うい、半端な誂え物の光は桃を彼女から奪ってしま…

それは「象徴」ではない

象徴とは何か。「何かを代理する、代表するかのような内容の言葉、あるいは記号である。とくに精神分析では無意識との関係で理解されるもので、何らかの心的な内容、心的なエネルギーを代表、あるいは代理するもの、あるいは置き換えられたものを象徴と呼ぶ…

激越、痕跡

*1光という体験に「激越」が同期する。それは現実での自然光ではなく、神経が極度の負荷を受けた状態で幻視する光である。それは全心身を突き抜けるほどのもの、身体を駆け巡るエネルギーの奔騰に身を引き裂かれる体験。“言語を絶する”体験がまさに形をなす…

『斜めから見る』感想

ジジェクに関してよく聞くのが「(ラカンを扱っている割には)意外と分かりやすい」という言葉。本人が言ったかは定かでないが、具体的な事柄を挙げてラカンの理論を紐解いてみせるのだけど、実際のところラカンの理論の核心に迫ってはいないとか何とか。私は…

「有罪者」抜き書き

大事なことを書いているんだろうけど、何せ主語が何かとか、何をもって論をつなげているのか分からなくなることがある。わざわざ引用してすぐに書き換えられる場所でこうやってアホみたいなことをやってみるのもなかなかタメになるんじゃないかと思ったりす…

恍惚と背反

何かを捉えようとする我々の態度は、大きく二つに分けられる。意識において足跡を確かめながらの理性的把捉と根拠なしに存在的様相を一挙に捉える直観的把捉。両アプローチが葛藤し同時に生起するのは、我々が意識的状態で意識的に捉え得ないものに立ち会う…