独語

「〜であるにもかかわらず」

世界が轟音とともに亀裂を走らせ、自身が立っているところなどないかのように地はひっくり返る。転変する。転覆する。分かり切ったことなど何もないと分かっているはずなのに、何かを分かったかのような気になって、つい私は足を滑らせる。そういったことに…

手元に何も残らないようにしなさい。あなたの所有物はあなたではなく、あなた自身さえもあなたではありません。我々は空に瞬く星たちと、地に流れる龍たちの間で捏ねあげられた泥木偶なのです。恐れることはありません。星と龍の声に耳を傾け、それに従いな…

不毛の地

そして突然、彼は気付くのである。自分に足りなかったのは糖分だったのだと。神の啓示のように舞い降りてきたその直感は彼の顔を、精神を幸福で満たす。そうだ、そうだったのだ、と自分の非凡さに初めて気づき、普段使いもしない頭が叡知に満たされているよ…

積ん読ライシス

よーしいいかそのままで聴け。積ん読なんてやめてさっさとその棚に置いてある本棚の肥やしを銭に変えてこい。「あーそうだったんか!その本俺も持ってたけど読んでなかったわ」って読めよ。さすがにもったいないよ。紙媒体とは本当におそろしいものである。…

独語

実証されねば人知の全体的な合意に到ることはないというのか。実証、という言葉は、誰にでも理論的に具体的証拠によって理解されうるようにする行為とでも名付けようか。それならば実証は合意への道ではあるが、少なくとも実証=統計的手法という関係は当然…

『斜めから見る』感想

ジジェクに関してよく聞くのが「(ラカンを扱っている割には)意外と分かりやすい」という言葉。本人が言ったかは定かでないが、具体的な事柄を挙げてラカンの理論を紐解いてみせるのだけど、実際のところラカンの理論の核心に迫ってはいないとか何とか。私は…

父の声・幼少期・そして草葉の蔭

今週のお題「父との思い出」 必然的に社会から放逐された。私は、大暑に揺れる草むらから父の声が聞こえるように感じた。温かく、甘く、しかし太い男の声は私の名を呼び、優しく包んで呉れるかのような、幼児期の記憶を呼び起こす。怒りの人であった母親に対…

 必然性のなさ、当然ではないこと

今まで気付かなかった劣等感を突きつけられるとき、足場を失って、まさに度を失って、世界がズルリと皮を剥き、見たこともない異様な世界を映し出す。きっかけは本当に些細なことで十分なのだ。「気付かなかった」ことに「気づく」とき、それは喜びでもあっ…