2009-07-10から1日間の記事一覧

捧げもの

ヴヴン。汚物にまとわりつく悪魔の配下の訪れが聞こえる。私は耳を塞ぐ。何ものも私に干渉できぬよう、耳を無益にせしむべく塞ぐ。強く強く掌を押し付けていると、耳の奥から羽音が響く、ヴヴン。背筋に冷たいものが走り、我を失った。耳の奥の渦巻きになっ…

桃の入口

桃李園、紙屑に飛沫を跳ね散らして車は視界を塞いだ。新たな傷をこさえた借り物の乗り主は蒼ざめている。もう少し進めば黒雲が辺りに続くだろう。馥郁とした桃を携えた新妻は、光る携帯を手に取って見た。危うい、半端な誂え物の光は桃を彼女から奪ってしま…