夢(女衒)

数か月前に、朝早くから書きつけていた夢の書き欠け。

もう雨も降り止み始める。私の仕事も、そろそろ始まる頃だ。今夜も少女たちは街頭に立つ。その斡旋が私の仕事だ。夕刻、逢魔ヶ刻、我々は動き出す。毎夜やってくる少女らを道端に立たせるために、基本的なこと等を伝えるのが「彼」の仕事だ。梅毒は持っていないか、いくらぐらいまでなら釣り上げられるか、どこで待てばいいか、云々。そうやってこまごまとした指導を受け、少女たちは夜、一人、そしてまた一人と外に送り出されていく。少女たちがどのような体験をしてくるのか。それは私はもとより、彼だって知らない。私も彼も、そんなことを知る気さえなかった。ごく最近、それでも事細かに描写してみせた少女がいたという。こないだの男はどうこう、待っていて寒くて風邪をひいた、このネックレスがどうの、あまりに延々と話し続けるものだから彼もとうとうシビレを切らして、彼女のケツを蹴って追いだしたのだとか。わめきたてる少女を夜闇に送り出すのは私の仕事だった。私もエライ目にあった。ところがだ。このところ私も、彼におおっぴらに言えないようなことができてきている。
はじめは些細なことだったのだ。街頭に立つ少女、その母親の容態が悪いのだと本人は言っていた。不安そうに彼女は繰り返し言っていた。私が少しでもお母さんにお金を作ってあげないと病気だって治してあげることもできない、だから私がんばるんだ。そう言って街頭に立って物の、ものも10分も経たないあたりで、彼女は泣き出してしまったのだ。人目も構わず、初めはシクシクとしていたくらいなのに、いつの間にかワアワアと声を上げはじめた。さすがに彼も苛立ち始めるのが分かる。なんだあいつ、うるせえな。黙らせてきてくんねえか。俺は忙しいんだ、ちょっと頼まあ。ひどい話だ。なんだって私がそんな面倒を?
彼女はひとしきり泣いて収まったのか、今日も一応の稼ぎはあったと言う。しかし彼女は一度では済まなかった。何度もぐずって、その度に私がなだめる役回りになる。面倒だった。五月蠅かった。しかし彼は彼で、細々とした面倒を私に言いつけるようにもなっていた。そもそも私は単なる仲介役のはずだ。それを何故?毎度のごとく何事かを伝えては、ごねたり何かと文句をいう彼女らをなだめる。
気が付くと、5人だった。私は5人の少女に、

ここで睡魔に襲われて書き止めた。続きは覚えていない。全体の半分もいっていないだろう。