由無事

言葉が頭から漏れ出してくるのを少しでも留めておかねばならない、と思った。言葉にならないもの、意識に上らないものにこそ注意しなければならない、とも。何かに心身をゆだねてはならない。たとえば机に手をついたその体制が私のスタイルとして頑なに固持されてはならない。私ではないところで迂闊に自己同一化をしてはならない。そう、それゆえに、依存するもの、依りかかるものを徹底的に切り離そうとしていたのだ。人はどうあれ、まず私だ。私が望むところではなく、望まぬところへと引き摺り込まなくてはならない。
朝の淡々とした作業の中、思う。私の頭の中でめぐらす抽象的な事柄は、実地に役に立たないものだろう。それでもなおこの感覚の波は書き留めておかねばならないという気がして仕方がない。雨の日の涼しく静かで、不穏な風景。しかしそれを口にすることはまた別の問題であろう。言葉にすると捉え損なうのだけど、言葉にすることで感興を殺がれるのでもある。そんなくだらないこと、何度やろうとおなじだろうが、という罵倒の声。