目を閉じ、耳を塞ぎ、口を噤み、鼻を抓んでいれば、何も入ってくるまい。外界からやってくる、取りいれたくないものを拒絶する者たちの多いこと。私も多分に漏れるまい。感覚を開け。自分の見ていると思っているのは単なる虚妄だ。知りもしないことを知っているというな。知っていると思っていても、それについて教えを垂れるな。みな、ひとしなみに何も知らないのだ。誰も、他の者に秀でるような権利も、自分だけを守ってくれるような権利ももってはいない。思い上がるな。我々は恒河沙。10の52乗の砂粒。ものの数にも入らぬ、無数の砂の一粒かそれ以下。終わっているどころか、始まってすらいない。ここには、はじまりもおわりもない。