須藤真澄[自選短編集]

これまた、とうとう買ってしまったという思い。数年前にこの人の作品をコミックビームで見つけ、竹本泉のような軽さ、温かさを見ると同時に違和感を抱き(当時はその類があまり好きではなかった)、なんで目尻に涙がいつも付いてんの、としょうもないところに不満を抱いては、まあまあ、という感じで読み続けていたのだけど、何かが積もり積もっていくような感じ、『長い長いさんぽ』でやられて、また今回発売された[自選短編集]をすぐさま買ってしまうのだ。なぜなのか分からない。ともかくかわいらしいのと同時に、洗練された絵とテンポの良さでホイホイとストーリーが進められていくように見えて、その根底に静かで温かい、この世を超えたところへの想いが深く流れているように感じるのだ。『長い長いさんぽ』は、私自身が猫好きなのもあり、どうしようもないけど泣けてしょうがない、悲しくて泣き腫らし、それでも我が家の猫を送らねばならないという身を刺すような哀しみがもう、とてもシンパシーを感じずにはいられなかったのだった。ことさらに、生とは、死とはと問いたてるのではなく、ハッと気付いたそのそばに、小さな宝石のような輝きがあり、それを観た者はその徴(しるし)が確かに刻まれる、という不思議なプロセスを主人公たちはたどるのである。作者はそれをとても大切にしているのだろう、大切にそれを抱きしめ、それでも足りないと物語にして皆に分け与えているようなのだ。これは愛すべき作品、作者。有川浩によるオビのコメントはなんだか陳腐で空振り感があるのだけど、まあまあそれはよいのである。読まねば始まらないこともある。

長い長いさんぽ  ビームコミックス

長い長いさんぽ ビームコミックス

須藤真澄[自選短編集]萌葱 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

須藤真澄[自選短編集]萌葱 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

須藤真澄[自選短編集]梅鼠 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)

須藤真澄[自選短編集]梅鼠 (ビームコミックス) (BEAM COMIX)