進化の話

ヱヴァンゲリヲン:Qを再度鑑賞して、連れは「これは進化の話なんだ」と言った。
我々は何者か、我々はどこへゆくのか、と言った者がかつていた。アイデンティティをめぐる問題として、そして今、自らの生にあずかっているものの存在論として。17年前のアニメ放映ではとみにアイデンティティの問題が宗教的な色彩とともに語られるようになり、13年前の映画上映で一部の人々は『マトリックス レボリューションズ』と同じ混乱の物語ととらえ、むしろこれを霊的な物語とリンクさせようとした。であるのならば今回の映画で、焦点(テーマ)はより尖鋭に描き出されているという印象が強い。
カヲルがシンジに乞われて見せたこの世のありさまと、その説明が最も示唆的である。彼の語ったことは今までの物語を総括するという役割を果たすと同時に、この『エヴァ』という物語の語り口そのものがどこへ向かおうとしているのかを指し示すものであったのかもしれない。主要な主人公たちは、作品の中だけでなく、わたしたちのこの世界とも密接にリンクしている。単なるフィクションとしてではなく、「我々は何者か、我々はどこへ行くのか」という言葉の後半部分を鮮明に突きつけてくるのだ。