やみ

彼の顔に驚きの表情が浮かび、その瞬間、ああわたしはこの人に伝えられなかったんだな、と落胆する。楽にやろうなんておもっちゃいなかった。ただ思っていることをこの人に伝えることしか考えていなかった。たぶん、意を汲んでもらうことも期待していなかったような気がする。遠まわしに言うこと、単刀直入に投げ込むこと、今日はそのどちらだっただろうか。目の前で揺らいでいるその光景は、私はいままで好きではなかったものだった。ぐちゃぐちゃの、あきらかにぐちゃぐちゃの闇。でも怖いだけではなく、花の香りの腐ったくらいに濃厚な匂いが私の鼻を刺す。私でなくとも、よかったのだ。