何か。

知らず知らずのうちに溜まっていたものがある。それは糞便のようなもの。空気のようなもの。今まで見続けてきたものが、気付かぬうちに色を変えて――腐ってしまったのか、あるいは別のものになったのか――見たこともないような姿をしている。そんなことがあるはずない、今まである意味慣れ親しんできたものがこんな姿になっているはずがない。しかし、今、私が目にしているものはどう考えても異形そのものでしかない。それと同時に、昔からそれはあったという確信はなぜか揺らいでいないのだ。それが変化したという事実が、私の磁場を狂わせようとしている。初めに、溜まっていた、と言った。それもまた確かなことの一つだ。我が血肉となっている何かは、この確かに確かであり、同時に確かに不確かな様相を同時に併せ持っている。混沌、と呼べるほどの絢爛さ、豊かさはない。ただそこにある、ということが私を怯えさせる。そこにある、とは一体何なのだろうか。それは本当に、今まであったものなのか?私はそれを信じていいのだろうか?ふとしたことで、姿を消してしまうのではないか、あるいは幻なのか、私が夢をみているのか。足場として考えても、そんなものの上に立っている自分にさえも我慢ならない。いったい何をやっているのだ、ここはそんな安寧にしていてよい場所などではない。気付いたら奈落に落とされるかもしれないのに、なぜ立っていられるのか。座っていられるのか。足場であろうと、目の前の何かだろうと、それは辛うじてそこにある、ということを当面のあいだ説明しているに過ぎない。一瞬、束の間。その先のことなど誰も、何も保証しない。一瞬で変わるようなもののどこに信用を置けというのか。しかし、その糞便のようなものは性懲りもなくいまだにそこにある。何なのか。これはいったい、何だというのか。何の益体もないのに、目の前に居座っている。いや、何をもってそこにいるのかも分からない。表情があるのかないのか。ただ、自分とかかわりがあるということは何となく分かる。私の思うままにもならず、かといって私の思いを映しているようにも見える。気味が悪い。脅かされている、ようにも思える。私をせせら笑っているようにも思える。背を向けざまに取りつかれそうにも見える。しかもだ。これは私だけに見えるものなのかも分からない。皆も同じものが見えているのだろうか?皆にも同じものがあるのだろうか?黄金色の、あるいは性根の悪い焦げ茶色のそれは、ただじっと私の前で、時に色を変え、延々とその奇妙な姿を現し続けている。