搦め手

身を沈め、それでもなお見えない。一手先しか読めない者にはまだ分からないということか。相手の弱点を徹底的に攻撃する。時には自身のダメージさえも相手へ転嫁してでも攻撃の手を止めない。相手からやってくる反撃は経験的に受け流し、平然としている。私にはそれがどれだけこたえることか。一見、無垢かとも思われたその人さえも、自身の暗い情念を、よりまっすぐな方法、仕方で差し向けてくる。表面上は何と言うこともなく笑顔でいるが、ふと目をやると、据えた目でじっとこちらをうかがっている。それでよいと思っている。私が思っているほど単純ではない。日頃ものごとは単純化するように心掛けてはいるが、そうすることで他を考慮に入れないということではなく、むしろ、それを初段階としてまず理解する手掛かりとするのみにとどめなければいけない。相手はこちらをじっと見ている。私はどう出る。知りたくもないが、知らねばどうしようもない。思っていた以上に相手は厄介だ。