この朝の、滲み水

オノ・ナツメ『逃げる男』、もの言わぬ動物に語りかけること。あるいは「動物にも感情がある」と云う者のように、ものは言わぬが通じ合う動物に語りかけること。そして、広がる空間で醜いからだを晒し、『アメリカン・サイコ』を思い、うなだれる。湧きだすように、先のことと後のことが、同時に押し迫ってきて、体の不調もまた、肋間の一点に吸い込まれるように滲み落ちていく。書くことで言葉は生まれず、それはある種の作業的様相を呈し始める。時は過ぎる。限られた時間の中でしか生まれない、体感的な間隙。巣。湧泉*1
お前は分かっていない。それはお前のイデオ。何も生まれない。循環する単一の命。変遷することもなく、自慰によって生まれ、サトゥルヌスとなり、糞便となってめぐり、また排泄物を食らう者となる。めぐりめぐるその欠片は気付かぬうちに削れて小さくなり、やがては消えてなくなるのだが、生み出す者の体に毒も同時にめぐり、いずれも有限の体をなす。

*1:滲み(しみ)とは上昇の感、染み(しみ)とは下降の感。