承前・小説

彼は、自分が年老いた姿を夢見た。
年老いた自分は独りごちる。



――世界を手に入れられないことなど初めから分かっていた。
しかし、私はそれでも呑みこもうとせねばならなかったのだ。
その結果が、このざまだ。
いったい私は何をしたかったのだろうか?――


老人はそう言った後に、町の塵にまみれていくのだろう。
かつて見た夢を、忘れるように眠り、死んでいくのだろう。



夜は遠くの爆音さえも飲みこみ、静かに更けていった。