ラスタ・ラスタ

かつて(10年ほど前)ハードなミクスチュアはレイバーかオタクの秘匿財産だと確信していた。いずれにせよ、一般に理解されてもいない音楽の一ジャンルを愉しむ、というそのこと自体がアウトドアにもインドアにも共通した魅力を放っていたように思う。その情熱は、若い魂が自分の特別性を誇示したがる所に源泉を垣間見ることができる。俺だけが理解しているんだ。周りのアホな奴らと違ってこんな価値あるものを見出すことのできる「俺ってすごい」。口に出しはしなくとも、我尊しの心根は隠しきれるものではない。
高校の頃に変人と噂されたTもその一人ではなかったろうか。羊羹や抹茶オレといった和菓子を特に好み、扇子を片手に突如優雅に歌い出す彼は、音楽において怪しげに魅力的な世界を醸し出していた。私はそのテープを渡される。真冬でも学ランを決して着ようとしない私も変人リストの一人に加えられていた。一体なぜ彼と知り合うようになったかは今になっては皆目見当がつかないのだが、まあ彼の渡したテープにはB'zのLADY NAVIGATIONの私家版ミクスチュアがあり、B'zの曲だと言うことは知っていたもののなぜか頭の中で他の気色悪い、しかし脳内を永劫ループするような曲と相まって私を中毒状態へと陥らせていた。うへっ。やたらハイテンポな曲調と、同じフレーズを何度も繰り返す病的な拍動は心臓のそれと類似しており、私を眠りへと誘ってくれる。いやそんな生易しいものではなかった。出す方の穴にイチジクを突っ込まれたような、隠微な感覚であったかもしれない。あれから10年がたち、私は体から酸化した皮脂の匂いを漂わせる哀しき中年になりつつある。私が悲しい。あの時の童貞パワーが懐かしい。年をとるごとに、賢者「モード」へ突入して平気な顔をしている厚顔無恥な姿をさらす私に時々気がつくが、やはり自分と自分の身の回りが新鮮な萌芽に満たされていたほうが、何かと刺激的であったかもしれない。二度と戻りたくはないが。では皆さんラスタピヤ☆*1

*1:「ラスタ・ラスタ・ラスタピヤー」はハムスター速報の『先日弟が家に彼女連れて北者ですが・・・』のスレ主のセリフからhttp://urasoku.blog106.fc2.com/blog-entry-410.html。どこをどう考えても空気を読んだ使用法が思いつかないこの南国風の言葉をつぶやきシローがやっていると思うと、もはや破滅的である。両手の中指と薬指を曲げてアロハな感じにしつつ、それをでんでん太鼓のようにくるくる回して友好的な態度を女性に示せば、効果てきめんであると考えられる。鼻に割り箸を突っ込む必要などどこにもない。あくめであくまで友好的な笑みを満面に。ちなみにここでは何日もリフレインするそのイメージを手前味噌な平和のシンボルとして使っているが実際理由なんてどうでもいいと思わないか?