日本愚劣階級列島

身内と直に話す機会を得、その際に私が思わず口走った言葉がある。「ゲルマニウムの夜」にて主人公の朧は「知に淫している」と教子に評された。覚えたての知識を誰かに披露したい熱に浮かされている状態である。いくら彼が賢いとはいえ、他人にひけらかすためにだけ知識を用いていたらそれは単なる自己満足にしか過ぎず、どう見ても自分の身につくものではない。キャバクラ嬢の注目を浴びたい一心で何の趣味もない薄給取りが雑学をひたすら仕入れるように、また哲学を齧ってみて「君はそう言うけどね、彼はすでにこう言っているんだよ」と、だから自分の意見はどこに行ったのかと聞く気も失せるような不毛な主張をしている半可通の大学生が悦に入っているように、もはや『知に淫する』とは程度の差こそあれその実相当に愚劣な行為であることがわかる。
では私はどうかというとそれは勿論私だって『知に淫する』者の一人だ。本棚に難解な書物を並べ悦に入り、「○○?読んだよ」と言ったその本は初めの数ページしか繰っていないという有様であることはもはや隠すまでもない。だからこれはまさに自慰行為であり、私の知識体系に向かう態度はすべからくその中核を自慰行為、すなわちオネイニーによって形成されていると断ずることができるわけである。


だから身内に口走ったことはなんだったのかって?「ち○ち○inする」ということだ。洒落た言葉だと言わしめるその直前にそれを呑み込ませるに十分下品愚劣な叫びを小中学生の脳から噴出させる。死なばもろとも。