未生のもの

・知識を与えても意味はないのだ。私が与えたはずのものは、手を離れた瞬間に/口を衝いて出た瞬間に、別のものとなる。本質など(あればの話だが)いともたやすく損なわれる。


・体感、というと外界からの刺激を思い起こすが、一時的な刺激のみが我々の―感覚―と―感情―の間にある、未生のものを直接に呼ばうわけではない。夢うつつのなか、人の声は応答を求め、私をうつつへと向かわしめる。あるはずのものが失われ、あったはずなのに何だったのかさえ忘れてしまう。方向性を持つものは持たないものに対して、優先的に動作を選択できる。動作自体が方向性をもっているからだ。未生のもの。侵されても怒りさえ生まれようがない。答えなど知らない。ただ少しばかりの揺れさえあれば、動き続けるもの。