トカトントン

トカトントン、この音はどこのものだろうか。クイナ、ですと言ったのは幼い大江光氏であった。クイナのトントン、という鳴き声に物言わぬと思っていた彼が応える。トカトントン、森の深みから聞こえるような木を叩く音。夜の闇から響いてくる、げに深遠な響き。トントン、トントン、トカトントン。それらの響きは私たちの親しみを呼ぶ。タンポコタン、と言ったのは太郎兵衛と張り合った古狸だった。村の若い衆を集めてかわるがわるに声を張り上げる。そう言うものこそタンポコタン。あの繰り返しが大好きだった。タンポコタン、タンポコタン。果たして古狸は朝には大きな金玉袋が破れて死んでいたという。突然の生々しさは不快ではあったが、軽妙かつ強靭な男たちの掛け合いは給食の時間を思い起こさせる。さてトカトントンとは何か。私はおそらく妖怪の仕業だと思うのだが、諸氏はいかにお考えだろうか。*1

*1:太宰だっつってんだろ。